魯山人作 「信楽すすき詩文壺」‥‥ 魯卿あん便り  自然美一辺倒

魯山人の住まいは慶雲閣と、名づけられ…神奈川県の重要文化財に指定されている建物だった。
庭には睡蓮が群がって咲く池があり、そこに番いのアヒルが泳いでいた。
魯山人亡き後の慶雲閣画像(撮影:高木義明氏)


慶雲閣は凛とした数寄屋造り、二十畳敷の大広間を中心に八畳が二つ。
板の間の六畳、細長い十二畳ほどの台所、そして四畳半の書斎兼仕事場があり、
そこに平安後期に渥美古窯で焼かれた「秋草文大壺」(現・国宝)の写真がかかっていた。
秋草文壺画像(慶応義塾大学蔵)
昭和17年4月、横浜日吉近郊の「白山古墳」(全長87m)から出土した。


窯場の方から「ギーコンパッタン、ギーコンパッタン」と土を砕く音がひびいていた。
山里で聞いたような水車小屋で米を搗く音に似ている。
固くなった信楽の黄瀬土を
「土練りの横山」と慕われていた職人さんが砕いていたのだ。
体の調子が悪くとも一日も休まない。
毎日、鎌倉山から小袋坂を自転車で上って通い、魯山人の晩年に土作りを十年以上も勤めていた。

晩秋の魯山人邸の庭には、ススキが尾花をたれ、枯れかかった羊歯や苔の間に、
ホトトギスが力なく咲き、そこに紅葉が舞っていた。
魯山人は午前中の仕事を終えると、スケッチブックを片手に庭に出て鉛筆を走らせていた。


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正面にはススキ      裏面には魯山人の境地を彫りこんだ


「信楽すすき詩文壺」に使われている土は、
朴訥な横山さんが丹精込めてこさえた信楽最良の土といわれる黄瀬土である。
土味の緋色が美しい器肌の正面には「ススキ文」が彫られ、
裏面には「聊習静以為娯 無境」と豪快に刻まれている。

魯山人のこころを詠むと、このような解釈になるのだろうか‥‥
何気なく庭に出てススキとお喋りをしていると心が休まる。
こうして心を静かに自然美と対峙することが楽しいのだ。



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仕事場に掲げられている「秋草文大壺」からの発想だろうか、
ススキを描く櫛目を十字に交差させていく過程を魯山人は楽しむかのように
その心の動きの現れ、交差する線の高低がかもし出す立体感などを、
生き生きと展開していくところに魯山人美学の原形を観ることができる。

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書画に使う号「無境」‥‥「芸術には境がない」




魯山人「大雅堂」・「美食倶楽部」発祥の地
 魯卿あん‥‥Rokeian画像定休日:日曜日・祝日

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辻岡正美様 撮影